「なぁ、カミやん」
放課後の教室で、上条は土御門に声を掛けられた。
そちらに顔を向け、上条は「なんだよ?」と尋ねる。
「空間移動能力者って、三次元を十一次元に変換して、テレポートしてるらしいぜぃ?」
「ふーん? それで?」
「つまり、空間移動能力者には、次元という壁を越える術がある、ということなんだにゃー」
「……それで?」
「オレの知り合いに一人、空間移動能力者がいるんだぜよ。それで、カミやん。一つ訊きたいんだが、カミやんの知り合いに、空間移動能力者はいるか?」
「まぁ、知り合いっつーか……一人、知ってる」
答えつつ、上条は白井黒子の顔を思い浮かべた。
「で、土御門? その、空間移動能力者を、どうしたいんだよ?」
「是非とも、紹介してほしいんだにゃー」
「……なぜ?」
「いや、空間移動能力者には、次元の壁を越えられるかもしれないんだぜぃ? 次元の壁を越える術を知ってる人間は一人でも多い方が良いんだにゃー」
「なんでまた、多い方が良いんだ?」
「次元の壁を越える術を教えてもらうためだにゃー。優秀な先生は、何人いても足りないということはないんだぜぃ」
「……どうしてまた、次元の壁を越えたいとか思ったんだ?」
「そんなもん、決まってるぜぃ」
そこで土御門は拳をグッと握りしめる。
「二次元空間へ行きたいからに決まってるにゃー!」
グラサンの奥で目をキラリと輝かせた土御門。そんな土御門の顔面を、何の躊躇もてらいもなく、上条は、
「そのふざけた幻想をぶち殺す!」
と叫び、殴ってあげたのであった。